サクセスリーダーインタビュー by Successly ペリー・モナコ氏 LinkedIn

LinkedInでカスタマーサクセスを立ち上げたペリー・モナコ氏が、カスタマーサクセスの本質にビビっときた瞬間の逸話や、同社がKPI重視型カスタマーサクセスへシフトした経緯、そしてお給料の仕組みなど、盛りだくさんな内容をお話しされてます! ぜひ何度もお楽しみください!

 

 

注:Successly社Adam O’Donnell氏の許可を頂き動画の和訳を紹介します

 


 

アダム

ペリーは2011年からLinkedIn社で活躍し、現在はLinkedInカナダのカスタマーサクセス責任者です。

 

今日ぜひ伺いたいのは、LinkedInのカスタマーサクセスマネジメントが以前の財務目標重視から現在のKPI重視に移行する経緯についてです。

 

核心に入る前に、まずは LinkedInのカスタマーサクセスマネジメントについて簡単に教えてください。

 

ペリー

実はLinkedInではカスタマーサクセスを長年ずっとやってたんです。でもそれをカスタマーサクセスと呼び始めたのはここ最近3年くらいです。

 

最初は自分たちのことをプロダクトコンサルタントと呼び始めました。意味する基本コンセプトは常に同じです。つまりカスタマーがプロダクトのエキスパートになるのを支援するのです。

 

カスタマーがプロダクトのエキスパートになれば、どんどんプロダクトを利用し当然契約を更新しますよね。なのでカスタマーをプロダクトのエキスパートにしようというわけです。ある意味で、それが最終的なカスタマーサクセスの目指す姿(The True North)だと思うのです。

 

要は、新たに購入したり契約更新したプロダクトに対しカスタマーが価値を見出し、それなしでは生きていけない、もっと使い倒したいと思うほど生活に浸透させるのです。

 

私がLinkedInにいた6年間に会社は大きくなり、当初グローバルで1,500人だったのが今や10,000人以上の規模へ拡大し、Microsoftファミリーの一員にもなりました。本当に目を見張る成長ですが、カスタマーサクセスについて言えばずいぶん昔に既に討議していたことなんです。

 

6年前のカスタマーサクセス グローバル会議の参加者は15?20人でした。今やグローバルで400人を優に超え、ここ北米と南米に限っても120人以上です。この組織の拡大スピードは本当に爆発的です。

 

ご存知の通り真のカスタマーサクセスは組織のトップから始まります。それはLinkedInでも同じでしたが、更に各部門として、各個人の役割においても大きな意味を当初から占めました。カスタマーサクセスに加え営業の観点からも、”カスタマーファースト” こそが私たちの信念(マントラ)なのです。

 

アダム

以前、あなたが「(LinkedInの)カスタマーサクセスは財務目標にフォーカスしない」と言うのを聞いて、僕は「え?」と思いました。他社は財務目標に向かっている段階なのに、あなたのようなリーダーは既にそこから一歩先へ行こうとしていて非常に面白いなと。

 

それは一体どういう考え方なのか教えてもらえますか?

 

ペリー

カスタマーに話をきくと、LinkedInで色々な人とやり取りしたり交流できる、それがとても役に立つと言うんです。大勢の仲間や、何かに秀でた人たちに出会える、それが本当に便利だと言うんです。

 

でも便利な一方で時々混乱もすると言うのです。こういう時にコンタクトすべきは誰なのか、ペリーなのか、アダムなのか分からないって。究極的には、ある組織の中でコンタクトすべき本当のキーマンが誰なのか教えてくれる人と繋がりたいと。

 

それで我々は、カスタマーにとってより使い勝手が良くなるよう、よりシンプルにしました。私がここに来てからの6年間は進化の連続でしたが、私たちの周囲にいる人の数、専門性の高い人の数は必ずしも変化していません。その点をふまえ、特定の人と繋がるためのファナルの入口をぐっと絞ったのです。

 

結果、繋がりたい人と繋がれるまでの道のりはぐっと短くなりカスタマー体験の質は格段に向上しました 。それはNPSの改善度合いからも明らかです。誰にコンタクトを取れば特別な繋がりが持てるのか、それは二人なのか三人なのか分かりませんが、とにかくそれがハッキリ見えるようにしたのです。

 

そして、誰が誰を「この人だ」と見定めて繋がろうとしているのかを LinkedIn側が把握できるようにして、そのカスタマーと同じくらい彼ら同士が繋がるべきだと思えばそうできるようにしました。

 

こういった改善はすべてカスタマーファーストの精神に行きつきます。カスタマーに成功をもたらしたいという動機がすべての活動をドライブします。チャーンを減らしたいという動機でなく、カスタマーファーストの精神なんです。

 

チャーンの削減はもちろん明らかに凄く大切なことで、営業的にも カスタマーサクセス的にも最終的に目指す姿(The True North) です。でもそういうふうに言い始めてしまうと、営業取引的な要素が強くなってしまうと思うんですよね、おそらく。

 

カスタマーファーストの精神が超大事と信じるようになったことが、私たちを大きく変えました。

 

例えば、問題を解決したいカスタマーが「正しくない人」に電話して質問したとしましょう。古い価値観だと、カスタマーファーストにはならないんですよ。きっとこんな感じの対応でしょうね。「こちらでは分かりかねます。担当者に繫ぎますので、そちらでお願いします」。

 

でもカスタマーファーストの精神だと、電話を受けたその人がカスタマーの質問に答え問題を解決する義務があるんです。同時にカスタマーを教育し、次にその問題が生じた時はここに電話せずに自分で解決してくださいね、と伝える必要もあるんです。そうできるようになるには多くのリソースや、トレーニングや、意識変革が必要です。

 

私たちのカスタマーファーストの精神は、 カスタマーが自分に連絡を取ってきたら、仮に自分が適任者でないとしても、最低限ごく基本的な返答をし、カスタマーが将来同じ課題を抱えないように正しい方向へと導いてあげることなんです。

 

カスタマーサクセスマネジャーにカスタマーファーストの精神を根付かせるためある決断をしました。カスタマーサクセスマネージャーから契約更新の財務目標を外したんです。もともと契約更新の財務目標は常に営業が責任を持っていて、カスタマーサクセスマネジャーは間接的にしか負ってなかったのですが。

 

カスタマーサクセスのリーダーとして今私が注力しているのは、カスタマーサクセスマネジャーたちが間違いなくチャーンが減るとわかっている業務に集中できるようにすることです。

 

カスタマーは我々のプロダクトを使って色々なことをしているので、正しいKPIを設定して運用する必要があります。月々のログイン数などを細かくチェックしなくても、LinkedInに登録したばかりの新規カスタマーがどれくらい早くログインしたかを把握できるからです。

 

我々のプロダクトの性質上、最初の30日以内にログインされないと大問題です。「ヒューストン、問題発生、問題発生、至急こちらのカスタマーに連絡してください」という感じです。KPIを用いればこういう事態が事前に測定可能です。正しい対応をすれば、そいうカスタマーが11ヶ月後に契約を解約する可能性は限りなく低くなります。

 

カスタマーサクセスマネジャーにはそういう業務に集中してもらいます。そうすれば11ヶ月後に営業担当者が契約更新をしてもらう時に大変役立ちます。

 

ここが大事な転換ポイントです。カスタマーファーストの精神をもち、カスタマーが求める価値をきちんと得られているかどうかを確認し、その上でチャーン削減に繋がることが分かっている指標/KPIをしっかり観察します。更に重要なのは、チャーン削減よりも、成長につながる指標ですが。

 

アダム

「今していることを変える必要がある、このKPIに注目する必要がある」と判断されたキッカケは何ですか? 何か具体的な事柄があったとか、大きな会議で決まったとかですか?

 

ペリー

LinkedInの特徴は、実験すること、変化すること、変えることに物怖じしない点です。

 

過去6年間、私の役職名はあまり変わりませんが、役割は間違いなく大きく変わりました。大きな視点で言えば、究極的には常にチャーンを減らすことと、ROIを実証する、あるいはカスタマーにROIを明確に示せるようにすることです。ただ、そのための方法・プロセスは常に変えてきました。これはLinkedInのような会社で働くメリットだと思いますが、私たちは自ら変えること変化することを恐れません。

 

私たちがしたいのは突き詰めれば NPSを引き上げることですよね? 加えてチャーンは低く抑え続けたい。

 

「そうか、NPSは望んだほど上がらなかった」それがここ数年間にハッキリしたことです。私たちのNPSは非常に良い水準を維持していたけど、LinkedIn限定のNPSというか、どんなNPSが良いか悪いかに関するLinkedInスタンダードがあって、それは非常に高いレベルを期待するものなんです。

 

そこで私たちは課題をすべて洗い出し、カスタマーの声に徹底的に耳を傾けました。これは本当に大事なポイントでした。コンタクトポイントをシンプルにしてほしいいという要望は、カスタマーからずっとずっと受けていました。面倒なことはしたくない、誰に電話をするべきか迷いたくない。必要なのは、電話をすればその人が質問に答えてくれることだったんです。

 

アダム

活用している指標についてもう少し教えてもらえますか? ログインの他に何があるんでしょう?

 

ペリー

私たちが注視しているのは4つの指標/KPIです。

 

1つ目はあるプロダクトの例で説明しましょう。オンラインで作成する「キャリアページ」というのがあります。LinkedInユーザーは会社のためになる機会に対して投資します。そうしない人は契約更新しないことが分かっています。

 

なので1つ目の指標は「そのカスタマーはキャリアページを作ったか? どの程度まで作ったか?」です。

 

カスタマーサクセスマネジメントでは、すべてのカスタマーのキャリアページに優先順位を付けます。キャリアページを使っていないカスタマーを追跡し、キャリアページの充実度に基づくリストを掘り下げます。キャリアページを充実させるべき人たちを見つけ、実際に着手してもらい、何か障害があるならそれを取り除いていきます。こうしてカスタマーが実際にお金を払って購入したプロダクトの完成度を見ていくのです。

 

2つ目は1つ目に似ています。LinkedInでは求人情報を出せますが、それを活用していないカスタマーは契約更新をする理由がありません。指標をどう利用するかという話に戻るんですが、私たちは利用状況、つまり求人情報をだす機能を利用しているかを測定します。

 

もし利用していなければ、それはある種のベンチマークです。カスタマーに電話をかけて利用しない理由を明らかにします。「なぜ利用していないのですか?存在は知ってますか?使い方がわかりませんか?より便利に使えるよう私たちがお手伝いできることはありますか?」という具合です。

 

3つ目は最初の30日間のログイン数です。カスタマーサクセスではよく Netflix を良い事例として挙げます。Netflixは、登録直後にNetflixにログインして映画を見ない人はチャーンの可能性が非常にひじょーに高いことを知っています。つまりログイン直後に映画を見てもらいたいわけです。Ntflixの価値はコンテンツですが、登録直後にログインしないと容赦ないほど頻繁にお知らせメールが送りつけられますよね。

 

私にとりNetflixのサービスはミッションクリティカルです。 私の生活がNetflixなしでは成り立たないのと同様 、私たちLinkedInのプロダクトもミッションクリティカルです。最初の30日以内にログインされなければ問題があるということです。問題発生のアラートがでたら、カスタマーサクセスマネジャーがカスタマーへ電話をかけてなぜログインしないのか確かめます。時々、誰かから貰ったとかの理由で登録したことすら知らない人もいるんです。というわけで最初の30日間のログイン数を非常に重視しています。

 

最後4つ目の指標は全体的な利用率スコアです。カスタマーの利用統計情報を大量に集め、利用率を0から100までの尺度で評価します。これはユーザー個人単位の総合インデックススコアです。

 

下位層のカスタマーはチャーンのリスクが非常に高く、かつ一度その領域を脱したカスタマーは上位層に移ることが分かっています。カスタマーサクセスマネジャーは下位層のカスタマーを追跡し、このプロダクトを使うとどんな良いことがあるか、どんな機能が便利かを説明します。これは毎月チェックする指標です。

 

アダム

大変興味深いです。数年かけて正確な数字を追いかけた様なとても複雑な指標を想像してたんですが、そんなことなくて本当に超明快でシンプルな指標ですね。

 

LinkedInほど豊富なリソースや長期間の履歴データを持たない中小企業にとって大変励みになる話です。理解しやすい指標で、誰もが自社プロダクトに適用できます。

 

ペリー

そこ大切です。私が6年前にカスタマーサクセスのリーダーに着任した時、1日10時間以上かけて何をしていたかわかりますか? Web-Exを立ち上げてカスタマーとの電話ミーティングをしまくっていました。

 

あるプロダクトの説明をする1時間ミーティングの予定が、結果的にはLinkedInプロダクト全般のデモをするミーティングになりました。なぜなら、カスタマーはLinkedInのプロダクトを気に入って購入して、理論的には良さそうだと理解していても、本当の意味でソーシャル・リクルーティングの価値は理解していなかったからです。

 

彼らはLinkedInをセットアップして運用を始めようにも、最初はLinkedInの使い方が全然わからなかったのです。

 

なので当時の私は事実上のトレーナーでした。6年前のカスタマーサクセスはトレーニングを意味していました。本当に1日8〜10時間、Web-Exにかかりきりだったのを覚えています。

 

それだけやるとWeb-Exのエキスパートになり、片方をミュートにしながら同時に2件のミーティングを並行できるまでなりました。「オッケー準備完了、5分後に始めるから、コーヒーでも飲もうか」なんて言って、もう片方に戻り「何か質問ある人いますか?ではこれで終わりにしましょう」なんて感じです。

 

本当に教育、教育、教育にあけくれました。でもそこで気づいたんです。教育っていうのはなんというか、人を気持ちよくさせるんですが、本当にそうするのが良いことなのかどうか分からないと。

 

カスタマー1人ひとり何を期待してプロダクトを購入し、彼らの真の課題は何かを正しく理解しないまま1時間の電話ミーティングをやり続けるのがいいことなのかどうか。

 

本当はもっと多くのサービスを購入してもらえるかもしれないのに、当時私たちにはそれを知る手段がなかったんです。なぜなら1つには当時私たちは利用データを持っていなかった、もう1つは当時のほとんどのプロダクトは私たちでさえ知らないような複雑な機能や便益を備え過ぎていたんです。

 

カスタマーと接する中で何かを発見するための時間が必要だと感じながら自分に問いかけました。「なぜこれが必要なんだ? 僕は今一体何をやってるんだ?」と。

 

それが僕にとり カスタマーサクセスとは一体何なのかがビビっと頭に閃めいた瞬間(Aha moment)でした。

 

このプロダクトで誰かの役に立てたらどんなにいいだろう、昇進とか昇給とか事業目標の達成に役立てたらどんなにいいだろう… そうだ、それが出来たらプロダクトを使い続けてもらえるんだ!」と。

 

仮にプロダクトが世界最高だとしても、その人にとって役に立たないなら使う気にならないでしょう。

 

そこで電話ミーティングの最初の5?10分を使い、その人が何をしていて、ボーナスはどれ位で、ゴールは何なのかを聞きました。そしてどうしたらLinkedInがその目標に貢献できるか考え、プロダクトにまつわるすべてのことを基本に立ち返ってまとめました。

 

その結果、今ではROIを追求するユーザーを獲得できています。私たちの仕事はカスタマー1人ひとりの成果に直結していると今では確信してます。

 

アダム

お給料を計算する仕組みについて簡単に教えてもらえませんか? LinkedInの仕組みは金額ではなくKPI重視だ、という話です。

 

ペリー

現在、給料は基本給にボーナス加算で決まる仕組みです。ボーナスは年次の全社ボーナスプールを基にKPIで測定する個々人の業績を加味して計算します。

 

昔はカスタマーサクセスマネジャーの給与に (収益連動の) 可変要素がありましたが今それはすべて排除しました。なぜなら、繰り返しですが、彼らには4つのKPIに全力で集中してほしいからです。

 

カスタマーサクセスマネジャーの給与に契約更新 (連動の可変要素) が紐づいていた時代に気づいたのは、彼らがごく少額の契約含めすべての契約更新に関する本当に細かい事柄に気を取られ過ぎたんです。

 

「契約更新されなかった、ああ全部おしまいだ、あの時ああすれば・・」とガッカリするより、本当は前向きに「予定した10件の契約のうち9件は更新されたぞ」と考えてほしかった。誰かがチャーンをしても大丈夫、気にしない。カスタマーサクセスマネジャーはそんなことでは揺らがないと。

 

悔しがる情熱があることは素晴らしいことですが、たった1件のロストを気にしてる間にどれだけ多くの契約から目が離れてしまっているか分かりません。

 

現実は 営業担当者が契約更新の責任を負っていて、カスタマーサクセスマネジャーは契約更新を完全にコントロールできませんでした。そうなんです、カスタマーサクセスマネジャーが契約更新の責任を直接負ったことは、後にも先にもないんですよ。

 

直接責任を負ってないのに、間接的に更新目標への責任を負っていたんです。それは彼らがコントロールできる範囲の外でした。注力の必要がないことに責任を持たせ過ぎると、結果として気が散って業績が落ちかねない。

 

特に私のようなリーダーには、カスタマーサクセスマネジャーがKPIに集中してくれる事が何より重要です。チャーン削減に向けチームを総動員して効果的な行動を起こせるからです。

 

営業担当には彼らの仕事をしてもらう。契約獲得は彼らの得意領域です。会社の収益が確実に成長するよう、彼らに契約更新にも取り掛かってもらいましょう、と。

 

アダム

誰が契約更新の責任を負うべきか、という論点は様々な議論があります。カスタマーサクセスマネジャーが負うべきか?、最初の1年は営業担当が負うとしても2年目以降はカスタマーサクセスマネジャーが負うべきでは?、などです。

 

でもペリー、あなたはカスタマーサクセスマネジャーはKPIのみに責任を持つべきで、契約更新やアップセルへの責任は負うべきでない、とおっしゃるんですね?

 

ペリー

そうです。確かに、契約更新の責任を負わない点で弊社のカスタマーサクセスはユニークかもしれません。

 

営業担当は契約絡みの書類作業だけで実際にカスタマーとは一切関わらない企業もありますね。カスタマーサクセスマネジャーが商談をまとめ、「営業さん、契約書類を用意して誰々に送ってください」みたいな感じです。それはちょっと極端な例かもしれませんが、私たちはその対極にいます。実際はその中間の企業が多いでしょう。

 

私たちカスタマーサクセスチームは?どうすればチャーンが減るというポイントを分かっているのでそれに集中し、営業チームには得意な仕事に集中してもらう、ということです。 私たちの営業チームは本当に優秀なので、LinkedInではそれがベストなんです。

 

現時点で、営業の人員を減らしたり、カスタマーサクセスチームに移したりする意思決定には何の意味もありません。なぜならLinkedInの営業はカスタマーサクセスと毎日連携して仕事をする人材として採用したからです。今ではそれ以上のことをやってもらってますが、それでも彼らは営業であって、カスタマーサクセスマネジャーではありません。

 

アダム

カスタマーサクセスマネジャーの日々の業務は?

 

ペリー

先ほど話した通り、カスタマーサクセスマネジャーには何よりKPIに集中してもらいたいと思っています。

 

優秀なカスタマーサクセスマネジャーほど時間管理が非常に上手いです。よし、月曜はこのKPI、火曜の午後はこのKPIに集中して対応しよう。火曜の午前中と月曜の午後は他の細かい仕事を片付けよう、という感じです。手元の連絡すべてにレスポンスしたり、直ぐには対応できない場所に行ったり、社内会議もあるだろうし、とにかく細かい仕事すべて片付けます。

 

彼らには週のうちだいたい半分に予定を入れ、週の途中で特定のKPIをチェックしてもい、残りはプロジェクトの仕事だったり色々なあらゆる仕事をしてもらいます。

 

私が自分のチームに対し常に言うのは、社内・社外向け問わずどんな仕事に取り組んでもいいが、それが次の4点のうち少なくとも1つに必ず関連していることを意識してほしいと。

 

1点目は、すべてに関わることなので大部分と言えますが、とにかく何らかの形でチャーン削減に繋がること。チャーンは減るに越したことはないです。

 

2点目は、成長機会の特定に繋がること。成長機会に気づいても営業に伝える公式ルートがないなら、自分と営業仲間にとって最もよい形を見い出して連携し、最終的に営業に契約締結もらってくださいと。チャーン削減の最善の方法は既存カスタマーにLinkedInとの取引を拡大してもらうことです。私たちは成長に向け集中しています。

 

3点目は、NPSの向上に繋がること。カスタマーファーストを第一に掲げる私たちがすべきはNPSの改善です。どれだけ改善したか確認するためNPS調査を年に2回実施しています。

 

4点目は、カスタマーの声を代弁すること。私たちカスタマーサクセスチームは契約更新の責任を負わない点でユニークですが、プロダクトの改善に直結する視点を持つ点でもユニークです。私たちは 日々カスタマーやエンドユーザーと一緒に仕事をしているので、プロダクトロードマップへ直接インプットできます。

 

もちろんプロダクトチームもフィードバックを収集する手段を持っていますが、それに加えて私たちの存在はプロダクトチームにとりカスタマーの声そのものです。なので、もしその仕事が最初の3つに該当しないなら、それはこの4点目なはずだから、カスタマーの声を自分の中に留めておかず是非プロダクトチームへフィードバックしてくれと。

 

つまり、カスタマーサクセスマネジャーには、常にカスタマーファーストの精神を持ちながら、自分の仕事がこの4分類のどれに該当するか常に意識しながら日々の仕事をしてもらっています。

 

アダム

営業にリードを引き継いだ後でカスタマーサクセスはそれを正式にトラックしていますか? それとも営業チームやプロダクトチームを信頼してお任せしてますか?

 

ペリー

今は信頼してお任せしています。プロダクトチームの方が追跡は簡単ですが、営業チームの方は収益成長の観点からも信頼してお任せしています。

 

でもこれ実は何というか板挟み問題です。本当は成長機会をキチンと見極めたい。けれど追跡調査は悪影響もあるんです。

 

追跡調査を始めるとリーダーのスコアボードが出来あがります。するとカスタマーサクセスマネジャーのXさんはリードX件を営業に引き継いだ、一方 カスタマーサクセスマネジャーのYさんはゼロ件というのが可視化されます。そういうスコアボードを見ると、私はその上部に表示されている人のことが心配になり、ダブルクリックの回数がどんどん増え、カスタマーサクセス関連の仕事をする時間が減ってしまう。

 

そして カスタマーサクセスマネジャーのYさんはガッカリして自分の仕事への自信を失うかもしれません。実際はチャーンをぐっと減らせる人だとしても。あるいは健全ではない無理な成長を追いかけ始め結果として更にチャーン増加に繋がってしまう可能性もあります。

 

従って私はカスタマーサクセスマネジャーが営業へ渡したリード件数を正式にカウントしてません。それでいいんです。なぜなら私はカスタマーサクセスマネジャーが営業マンのようになってしまうのを懸念してるからです。

 

アダム

もう一度確認ですが、カスタマーファーストの精神を第一に掲げているんですよね。

 

ペリー

そうです。

 

アダム

カスタマーサクセス業界の優れた思想的指導者、リンカーン・マーフィー氏は「カスタマーサクセスマネジャーがアップセルや契約更新を担当するべきだ。そこだけ担当を分けることでカスタマーを煩わせるべきでない」と言ってます。

 

いつもの良く知ったカスタマーサクセスマネジャーが契約まで担当してくれ営業プロセスがスムーズに進むならカスタマーは煩わされなくて嬉しいのが明白なので、彼の説には一理ありますよね。

 

一方あなたは、カスタマーサクセスマネジャーはアップセルや契約更新については営業担当の手を借りることで会社全体の収益成長を目指すプロセスを推奨してるように聞こえます。

 

ペリー

その通りです。我々の重要リストの1位は常にチャーンの削減で、2位は成長機会の追求です。成長機会を見い出せれば、それはチャーンの削減の役に立ちます。でもLinkedInの考える優先順位や思考性の観点では、チャーンの削減が常に最重要項目です。

 

そして成長機会を見極めたら営業担当に任せるべきです。そうすれば営業担当もあなたをより良いパートナーとして評価してくれ、きっと凄く感謝されますよ。

 

営業担当には、たとえたった1社でもアカウントの売上成長を助けてくれる人の方が、10社のアカウントを維持する人よりもずっと分かりやすい”良い”カスタマーサクセスマネジャーです。

 

営業担当は通常、10社のアカウントを維持するのがどれほど難しいか分からないし、考えてもいないかもしれませ。ユーザーがプロダクトをたくさん利用するのは当然だと思っているかもしれないです。

 

でも私たちは知っています。カスタマーサクセスのプロフェッショナルがカスタマーと密に関わり、1人ひとりのユーザーがプロダクトを使ってくれるようにするのは、皆さんが思うほど簡単なことではありません。

 

(原画)

 

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