
カスタマーサクセスというお仕事が超おススメな理由:(1)カスタマーサクセス人材は引く手あまた!
こんにちは! Customer Success Japan (当サイト)を運営する弘子ラザヴィです。
先日、某日系スタートアップさんのカスタマーサクセス責任者から社内講演の機会を頂きました。
「若いメンバーを動機づけたい」というお題を頂戴したので「皆さんのようなカスタマーサクセス人材は、(1)引く手あまた!で、(2)カッコいい!くて、(3)豊かな人生を送る!のだ!」というプレゼンをしました。
このサイトで何度も紹介していますが(参考「カスタマーサクセスが花形キャリアとして脚光を浴びる理由」など)、いま米国でカスタマーサクセスは思いきり花形なお仕事です。それは脚色が一切不要な事実なので、日本の若い方々に分かりやすくそれをお伝えすればよいなと思いました。
結果は、皆さん大変目を輝かせて聞いてくれ評判もよかったとのこと、折角なのでここでも少しポイントをご紹介しようと思います。
今回は「(1)カスタマーサクセス人材は引く手あまた!」です。
1. 人びとの関心が爆増
データを紹介します。Google Trend analyticsを使い、「Customer Success Manager」というキーワードでの米国での検索トレンドを分析しました。
検索数がほぼゼロだった2011年8月を起点に、直近の2018年7月の実績を100とした時の指数(縦軸)でその間7年間のトレンドを表にしたのが以下です。
2年おきに階段を上がる “跳ね” をみせつつ検索数が増えていますが、たった2年前の2016年までその数は今の5割にも満たなかった、つまり直近ほど加速的に関心が高まっている様子が分かります。
米国のカスタマーサクセス仲間によると、最初に関心が跳ね上がったのは2012年。シリコンバレーのVCが投資先の企業へ「カスタマーサクセスをしっかり実行すべし」と強力に指導し始めたのがキッカケです。
米国のVCにはシリアルアントレプレナー出身者が数多くいます。彼らは自身が起業家として何度も事業を成長・成功させてきた経験則から、カスタマーサクセスの重要性と本質を身体で理解しています。
例えば、Bessemer Venture Partners社のパートナーであるバイロンさんは、自分が起業した会社のCEOだった時、倒産の危機から脱した時の経験が今のカスタマーサクセスの原体験だと語っています(参考「VCが語るカスタマーサクセス:バイロン・ディーター氏」)。
また、Gainsight社のCEO ニックも、実はGainsightに参画する前、自分が経営していた会社での経験からカスタマーサクセスの重要性を痛感した一人です。事業エグジットに成功しVCに転じたものの、Gainsight社(の前身)に出会い、心から「これだ!」と確信してカスタマーサクセスという新カテゴリーを創出する覚悟を決め、同社とカスタマーサクセス市場をシンクロさせながら大きくする役割を果たしています。
このようにカスタマーサクセスは 2000年代に熾烈な競争を勝ち抜いて成功した企業の現場で経験則から実行されたことを、その経験者が投資・指導側にまわることで、「カスタマーサクセス」という名前を付与され、方法論として体系化されて世の中に登場したものなのです。
ちなみに、Marketo社お買い上げで話題な Adobe Systems社が、売り切りモデルからサブスクリプションモデルへ大転換を英断し売上が凹んだのは2013年でした。そこからカスタマーサクセスに全社上げて取り組み大きく成長したのは有名です。(参考「Adobeの大改革を成功に導いたカスタマーサクセス」)
そして次の山は2015年。キッカケは、それまでSaaSやソフトウェア企業が中心だだったカスタマーサクセスが、GEなど非ソフトウェア業界へ広がったことでした。特に大企業が取り組みだしたことで、採用募集数が一気に増えたのが関心増の後押しとなりました。なお、GEが GE digital社をシリコンバレーに設立したのは2015年です。
カスタマーサクセスへの関心は直近数年で爆増していますが、重要なポイントは、それが一時的流行りのバズワードではないということです。10年以上前の成功企業の経験則に根差し、逆に10年以上かけて考え方・方法論が成功実務をベースに確立され、分かりやすい名前がつき、そして信念をもったソートリーダーらが啓発に投資したことで一気に認知を獲得したのです。
2. カスタマーサクセスチームがつぎつぎ新設されると同時に急成長
2度目の “跳ね” 直後の2016年に Totango社が実施したカスタマーサクセス人材の実態調査「Customer Success Salary Survey & State of the Profession Report 2016」から、その頃の様子を少しご紹介しましょう。
以下の表は、調査当時(2016年)のカスタマーサクセスマネジャーが所属していたカスタマーサクセスチームの年齢と成長率を図にしたものです。
ご覧いただくと明快ですが、75%のチームは立ち上がってまだ3年未満、そして約80%のチームはすごい勢いで規模拡大中です。カスタマーサクセスを実行するために、まずはメンバーの採用・育成という課題に四苦八苦している様子が伺えます。
面白いのはそのメンツです。以下は同実態調査に回答した方がたの前職(バックグラウンド)分布です。
そうなんです! カスタマーサクセス人材はとても希少な中で人材ニーズが急増したため、カスタマーサクセス経験者はなんと8%しかいません。
一方、アカウントマネジメントとセールスを合わせた営業系が36%と一大勢力で、続いてサポート/サービス、コンサルティング、マーケティングと、非常に多岐にわたるバックグランドをもつ人たちがカスタマーサクセスチームに集結した様子がよく分かります。このように米国では、さまざまに異なる強みをもつ人たちが集まり、新生チームのカスタマーサクセスのあるべき姿が試行錯誤されました。
3. 誰もが注目する急成長中&最も有望なキャリア
Totango社の調査から2年後の2018年、新たな “跳ね” に繋がる事件がおきました。何かというと、LinkedIn社が毎年発表している、米国で「最も有望な仕事(the most promising jobs)」及び「最も成長している仕事(the fastest growing jobs)」ランキングでカスタマーサクセスマネジャーが堂々「3位」に選ばれたのです。
実は昨年2017年の「最も有望な仕事」ランキングでは 19位、だった所からの大躍進ということもあり、米国のカスタマーサクセスな人びとの間では静かに盛り上がりました。
「静かに」と言ったのは、カスタマーサクセスの経験豊富な人にとってそれが「最も有望な仕事」であることは既に実体験に基づく説明不要な事実であり、「(想定内だが)ようやく外にも知れ渡ったなあ」という感じだからです。要は、米国でカスタマーサクセスは「花形キャリア」として広く一般社会に認知された段階にいよいよ突入したのです。
以下はその「最も有望な仕事(the most promising jobs)」 ランキングトップ10です。
ご覧いただくと分かるように、カスタマーサクセスはどれか1つの項目で抜きんでているわけでなく、4項目(基本給、求職数、求職数成長率、出世スコア)すべてでバランスがよい仕事です。
また、同ランキングトップ群のお仕事、即ちEngagement Lead や Software Engineering Manager、Solutions Architectになるには習得に数年要する特殊専門知識が必要ですが、カスタマーサクセスマネジャーはそこまで高度な特殊スキルが要求されないので、ランキング上位の中では比較的門戸の広い仕事といえそうです。
以下は 「最も成長している仕事(the fastest growing jobs)」ランキングトップ5です。
ここでは特に、現職者数が他の職種に比べ桁違いに多いのが目立ちます。米国で現在カスタマーサクセスマネジャーとして活躍している人は約3万5千人! なお、LinkedInによると、全世界で活躍中のカスタマーサクセスマネジャーは5万人を超えています。
もちろん、10万、100万単位でいらっしゃる、営業やマーケティングという伝統的な職種に比べればまだまだ少数ですが、カスタマーサクセスの方がたが既に一定規模いる上で、今とても急成長中のキャリアなのがお分かり頂けると思います。
何より、LinkedInの実績データに基づく評価で「花形」のお墨付きが出たのは、それによって今後カスタマーサクセスをキャリアとして目指す優秀な若者が増えるだろうことを考えると、非常に大きな意義があると思います。
4. 日本の動向
最後に、冒頭紹介したデータの日本版をご紹介します。Google Trend analyticsを使い、「カスタマーサクセス」というキーワード(日本語)での検索トレンドを分析しました。
米国の分析に合わせ 2011年8月を起点に、直近の2018年7月の実績を100とした時の指数(縦軸)で同様にトレンドを表にしてみました。
残念ながら 2016年前半まで検索ゼロが繰り返されていましたが、2016年後半にようやくゼロから離陸、2017年には最初の “跳ね” が観察されました。乱暴に言うと、米国に4?5年遅れをとりながら今ようやく立ち上がった状況です。今後、米国のように世の中の関心が爆増することが予想されます。
一方、カスタマーサクセスが重要になった背景、即ち、世の中のデジタル化と共にリテンションモデルが急速に浸透しているという事実、そしてリテンションモデルで成功するにはカスタマーサクセスが必須という事実を踏まえると、モノ売り切りモデルで勝ってきた日本企業こそ1日も早くそれに気付いて舵を切る必要がある!と、個人的に危惧しています。
そして私の認識が正しい場合、日本では欧米の「引く手あまた」をはるかに上回る「引く手 “超” あまた」になる、というより、なるべし!と確信しています。
以上、「カスタマーサクセス人材は、(1)引く手あまた!で、(2)カッコいい!くて、(3)豊かな人生を送る!のだ!」のうち、(1)つ目でした。(2)つ目以降は、また改めてご紹介します!
(以上)