
カスタマーサクセスの文脈で「エフォート(Effort)」という言葉を耳にしたこと、ありますか?
この「エフォート」という言葉、実は今、米国で非常に注目されています!
「エフォート」を私なりに(勝手)定義すると、「カスタマーが何かをするのに必要とした時間やエネルギー」です。特に、イライラする・辛い・苦しいといった、出来るだけ避けたい感情・経験・作業を伴う時間を指すことが多いです。
女性なら、「エフォートレス」なお洋服・コーディネイト、といった表現を聞いたことのある方も多いでしょう。こちらは、リラックスできる、肩ひじ張らない、疲れないという “快適さ” を強調するニュアンスがあります。
一方、カスタマーサクセスの文脈て用いられる「エフォート」は、基本的に “不快さ” を強調する言葉です。私の認識上、最も良く耳にするのは「カスタマーサポート」分野です。
サポートの世界では長らく、解決に要した「時間」と「コスト」が2大指標でした。しかし今米国でこの2大指標は時代遅れとなり、代りに登場しているのが「エフォート」指標です。仮に10分かかっていた問題解決が5分に短縮されたとしても、カスタマーが感じる「エフォート」が同じならそれは改善ではない、という考え方です。
そうです、非常に主観的な指標です。事実が客観的に同じでも、エフォートをどれだけ要したかの主観はカスタマーごとに感じ方=評価が異なります。しかし、それこそが、より良いカスタマー体験を提供できたかどうかを如実に測定する指標だと考えるのです。
そんな主観指標である「エフォート」が俄然注目を集めているのは、エフォートとリテンション率が明確に相関するという事実が明らかになったからです。
“エフォート”。 ? ぜひ皆さんも、今後の動向を大いに注目してみてください。
そのエフォートを、オンボーディングの成否評価に活用すべし!という記事を紹介します。オンボーディングに悩んでいる方、明日にでも取り入れられそうですよ!
オンボーディングプロセスを改善する最高に簡単な方法:”カスタマーエフォート”を測定する
オンボーディングのプロセスを変えたい!けれど、先延ばししてませんか? 変えたいけど、いつ変えるべき? どこから変えるべき? と考え出すと、結構悩みますよね。ちゃんと変えようと思ったら、それこそ何年もかかる大仕事になりそうです。
そんな超難関に感じるオンボーディングのプロセス変更ですが、実は、変更による改善効果がどれくらいあるかを即チェックし優先順位付けする方法があります! それは、オンボード完了の直後にフィードバックを収集 し「カスタマーエフォートスコア(Customer Effort Score)」を測定する一連のステップです。
“オンボード完了”とは?
「オンボーディング」とは、SaaS事業でよく使われる用語で、その定義は割と人それぞれです。というのも、プロダクトやサービスの種類・レベルによって内容が少しずつ異なるためです。
「オンボード完了」は、カスタマーが目標達成に向かい進むカスタマージャーニーにおいて、その長い旅路が始まる正に出発点です。プロダクトトレーニングの観点でいうと、カスタマーがひと通りの使い方を学び終わり、今後は介添え不要で使えるぞ、と自信をもった段階です。
あなたの会社における「オンボード完了」を明確に定義できれば、あとはそれを逆算することで、オンボーディングプロセスを具体化することができます。
オンボーディングプロセスを改善する最高に簡単な方法
オンボーディングのプロセス変更に必要なアクションは具体的にたくさん思いつくと思いますが、各変更に優先順位を付けるにはどういうアクションが必要かご存知ですか?
カスタマーサクセスマネジャー向けの手順書をつくることはできると思いますが、どの手順が最も大きな成果を出せたのか、あるいはオンボーディング中に最もよく聞かれる質問は何か、といった質問にパッと答えられますか?
「カスタマーエフォートスコア」を、オンボーディングのプロセス完了直後に収集・測定することで、オンボーディング中のカスタマー体験を改善方法に優先順位を付けることができます。
最も頻繁、最も基本的な「エフォートが必要なプロセス」に焦点をあててください。最初から完璧なオーバーホールを目指すのでなく、段階的なプロセス変更を目指しましょう。
「カスタマーエフォートスコア(CES)」とは
カスタマーエフォートスコア調査は、そのプロダクトやサービスに関わるカスタマー体験がどれだけ”エフォート”を必要としたかをカスタマーに「1」から「7」の尺度で評価してもらうものです。
CES調査は、全般的な定点観測ではなく、取引単位に行う調査です。即ち、特定のカスタマー接点が終わった直後に、その接点に関わる体験を評価してもらうものです。
「カスタマーエフォートスコア (CES) 」がなぜ重要なのか
なぜ「エフォート」に焦点を当てるのでしょう。
エフォートを問うCESは、満足を問うNPSよりも意味あるスコアなのでしょうか? ? 答えはYesです。なぜなら、よりエフォートの少ないオンボーディングプロセスは明らかにリテンション率と相関するからです。
ハーバード・ビジネス・レビューの記事『もうカスタマーを喜ばせようとするな』によると、「忠実なカスタマーを増やす常套手段は、カスタマーが抱える問題を迅速かつ容易に解決することだ」そうです。
「私たちのプロダクト/ サービスを使い始めるのにどれくらい苦労しましたか?」という質問をカスタマーへ直接すれば、オンボーディング中に彼らが直面したさまざまな困難・障害をすぐさま特定し、即対処することで、大きな効果を上げられます。
CES調査は、そのカスタマーの心の中に占拠されている最も辛かった経験についてオープンエンドで答えてもらうものです。カスタマーが特に苦労したことを質問するため、カスタマー体験に最も大きな影響を及ぼす変更点への優先順位がおのずと浮かび上がるのです。
CES調査を長期的に行えば、プロセス全体のブラッシュアップに繋がるフィードバックが手に入ります。
・カスタマーが目標達成するまでに出来るようになるべきこと、理解するべき情報は何ですか?
・そのためにはどのような情報が必要ですか?
・さまざまなタイプの情報を届けるには、どのようなコンテンツフォーマットが最適ですか?
・あなたのカスタマーが「わお、これ最高!」と最初に思うタイミングはいつですか?
・そのタイミングに到達するのにどれくらい時間がかかり、何を変えればそれを短縮できますか?
・営業チームからサクセスチームへの引継ぎ時に重要な情報のロストがありますか? どんな情報ですか?
カスタマーが苦労せずに期待成果を実現できる、に繋がることに全力で取り組めば、カスタマーはあなたの会社とより長くより深い関係を築いてくれます。結果、アップセルやクロスセルの機会が増えます。更に、効果の高い口コミ紹介や推薦も増えます。
もうお分かりですね、カスタマーエフォートを最小化することはあなたの会社の成長にとって非常に重要なことなのです。
会社の成長にあわせ何度も実施し続けることが大切
オンボーディングのプロセス完了直後にCESのフィードバックを収集すれば、リテンション力が高まり、忠実なカスタマー基盤が構築される、というお話しをしてきました。
CESを測定すれば、カスタマーと関係をもち始めたばかりのタイミングで、彼らに対し、あなたの会社がカスタマーをどれだけ重視しているか実証できます。
また、カスタマーからのフィードバックに基づいてオンボーディングプロセスを設計すれば、競合との差が際立つカスタマー体験を提供することもできます。
あなたの会社やプロダクトが新しいニーズに対応しながら進化していったとしても、カスタマーへ常にフィードバックを求め、それに基づいてオンボーディングプロセスを改善し続けてください。そうすればきっと、カスタマーと一生のお付き合いができるでしょう。