
日本でカスタマーサクセスを推進されるリーダーとお話しすると、ヘルススコアを設計中、または導入予定という方が多いです。それには設計段階から検討すべきことが多く、皆さんとても苦心されています。
それでもメリットは超大きいので早く着手すべきだ! という記事を紹介します。
注:Gainsight社の許可を頂き原文の和訳を紹介します。
カスタマーヘルスの測り方
このお題は、あらゆるカスタマーサクセスチームにとり大変重要なテーマであり、かつ私もとても大切にしているテーマです。実務的には、カスタマーを赤、黄、緑に色分けし、長年してきた対策を講じるというシンプルなものです。
でも皆さんご存知の通り、このモデルは時に「無いよりまし」な位置づけです。それは、次のような深刻な弱みを抱えるからです。
・たいてい手動の更新が必要
・基準が非常に主観的になる傾向がある
・事業が成長するにつれ、測定されないカスタマーが増える傾向がある
・更に掘り下げないと、カスタマーがなぜその色なのか理由が分からない
・契約更新件数を正確に予測したいCFOは “ヘルス” スコアを信用しない
にもかかわらず、この信号機のようなスコアリングモデルは、私たちを正しい方向、即ち全カスタマーにヘルススコアを適用するよう促します。
もしこれを継続的・自動的に実施できれば非常に貴重なデータが得られるということを皆知っています。
その価値については後ほど述べますが、まずはスコアリングに必要な自動測定・分析・レポート作成までしてくれるアプリケーションが手元にある(実際あります!)と想定し、何をすべきか見てみましょう。
「カスタマーヘルス」を定義する
まず「あるカスタマーがヘルシーである」が実際に何を意味するのか決める必要があります。
例えば、ヘルススコアが1?100中で48の場合、「赤」の場合、 A〜F 中でCの場合、それぞれ何を意味するのでしょう? それに答えるには次のような質問について考える必要があります:
そのスコアは…
1. 契約更新やチャーンの予測因子ですか?そうあるべきでしょうか?
2. どのくらい速く変動しますか(ある日は赤、次の日は緑)?
3. あなたが提供する価値だけでなく、彼らがあなたに提供している価値も反映してますか?
4. どんな要素から構成される総合スコアでしょう(←これ重要です!)?
5. 各構成要素に主観が混じりますか、それともすべて客観的・具体的ですか?
6. 各構成要素の重要性は同等ですか?
このような思考プロセスをたどっていくと、こういった質問を更にもっと多く自問することになります。
少し辛い作業ですが、同時に楽しくもあり、ある意味健全な演習です。スコアリングを自動化する予定がない場合でも、カスタマーヘルスに関わる重要事柄をいろいろ熟慮し重要な考え方が導き出されるでしょう。
ただし、この思考プロセスに関与する人の数には注意しましょう。数が重要な「証拠」ではなく、あくまで意見だからです。意見は「鼻」のようなものです。誰もが鼻を持っています!
カスタマーヘルスへのインプット
カスタマーヘルスの測定に組み込むことを、最低限でも検討すべきの要素は以下通りです:
・あなたのプロダクトの全般的な利用状況(明白です)
・あなたのプロダクトの最も手放せない機能の利用状況(明白ではありません)
・利用の深さ: プロダクト利用度(%)
・利用の幅: ライセンス数
・アカウントの成長(金額、もしくはライセンス数)
・ カスタマー歴/ 利用時間の長さ(特に契約更新してほしい場合)
・ 割引レベル(ん?そうですね重要かもしれません)
・ 契約更新の回数
・ アップセル回数
・ 初期費用%(研修や導入サービスなど、より利用してもらうためにどれだけ費用を使ってるか?)
・ アンケート結果
・ サポートチームへの問い合わせ頻度
・ マーケティング活動への貢献:口コミ、講演会への登壇、活用事例への協力
・ プロダクトに関するフィードバック
・ コミュニティ活動への貢献
・ 請求履歴
・ オンボード終了から最初の契約更新までの期間(新規カスタマーの場合)
・ 幹部との関係性
・ 会社全体の関係性
・ 上級役員があなたのソリューションを利用しているか
すぐに思いつくだけで20個、おそらく熟考しなくても更に10個くらいすぐ追加できます。
要は、カスタマーヘルスに影響する要素が非常に多く存在するということです。リストが完璧になることはありません。そしてソーシャルメディア関連の項目が1つも上がっていないことにご注意ください。
重要なのは、トップ100カスタマーだけ手動でスコアリングする場合でさえ役立つと思われる、管理できる数にリストを絞り込むことです。
将来スコアリングを自動化する時は、自動測定できる項目を増やし、逆に主観的な項目は減らすことになるでしょう。
ご覧の通り、上述リストの中には非常に重要かつ主観的な項目があります(例えば、幹部の関係性)。主観的な項目の良い所は、私の経験上あまり頻繁に変化しない点で、通常は四半期ごとに見直せば充分です。
複数のカスタマーヘルスモデルが必要?
直ぐに気づくもう1つの問題は、複数のスコアリングモデルが欲しくなることです。
契約後90日未満のカスタマーには、1年以上利用してくれているカスタマーとは別のモデルを使うことが理にかなっています。またハイタッチ系の戦略的カスタマーと、ノータッチもしくはテックタッチ系のカスタマーには別のスコアリングモデルを使いたいでしょう。
これらは微調整ですので、ベースモデルを構築した後に変更可能です。変更をどこかの時点で検討したくなることを覚えておきましょう。
カスタマーヘルスを測定することの価値は想像以上に大きいです。
ヘルシーに成長し続ける定期収益型の事業は、創業3?5年後には、新規契約の収益をはるかに上回る更新収益が上がる状態になります。こうなると、契約更新をより正確に予測する必要が生じます。
契約更新の予測は新規契約の予測よりもはるかに正確であるべし、と考えるCFOの期待値が高いことを頭に留めておきましょう。適切かつタイムリーなカスタマーのヘルススコアがあれば、ロジックに基づき更新予測の精度を上げることができます。
また、信頼できるヘルススコアがあれば、カスタマーサクセスチーム and /or アカウントマネジメントチームの活動の優先順位付けがしやすくなります。彼らのリソースは高価なため、正しく優先順位をつけてより高い効果を出せれば、それは企業にとり大きな価値になります。
カスタマーヘルスの進化
私がここで話していることは、長く、厄介で、変化の余地が大きな旅路であることは重々承知しています。それは事実ですが、同時に実りの多い、楽しい旅路でもあることを信じてほしいです。
カスタマーサクセス組織が成熟するにつれ、カスタマーヘルスの測定は不可避になるため、より早く着手することは一考に値します。
例えると、マーケティングオートメーションの世界に近いです。カスタマーのヘルススコアをつけることはリードスコアリングに似ています。
7年前のマーケティングオートメーションの世界では、カスタマーにリードスコアリングをさせることは歯を抜かせるのと同じくらい困難だと皆が言いました。今日、多くの企業がマーケティングオートメーションツールを取り入れリードスコアリングをしています。特にデジタルマーケティングに真剣に取り組む人たちは、着任初日からリードスコアリングを始めます。
カスタマーサクセスの世界のヘルススコアリングもまったく同様の展開になるでしょう。ただし、マーケティングオートメーション世界の現状に到達するまでの猶予期間は非常に短く、ひと月遅れるごとに更に短くなります。
要は、カスタマーヘルススコアの運用に今すぐ着手しましょう! が私のメッセージです。今は喫緊の課題でなくても、早晩その必要が生じます。その時に準備ができていれば良いのです。
もしかしたらあなたがその任務をリードするかもしれません。あなたの会社のCFOやCEOがカスタマーのヘルススコアリングの真価に気づき、それがあれば契約更新を予測する能力が大幅に向上することを嗅ぎつけた時、あなたに残された猶予時間は本当に短く、超特急での対応が必要になることでしょう。