カスタマーサクセス パフォーマンス指標™ 2018ベンチマーク調査結果

 by 弘子ラザヴィ

 

カスタマーサクセス パフォーマンス指標™ ベンチマーク調査2018 に参加下さった皆さま、どうも有難うございます!先日、分析を担当するアンドレアス氏が日本を含む全体の分析結果を公表しましたので、本稿ではその内容をお伝えします。

 

なお、カスタマーサクセスパフォーマンス指標™とは何か、など概要については先の投稿「世界からみた日本のカスタマーサクセス:グローバルベンチマーク調査 2018速報」をご覧ください!

 

カスタマーサクセス パフォーマンス指標™ ベンチマーク調査 の考察

約200社が参加したカスタマーサクセス パフォーマンス指標™(以降「CSPI」)2018年ベンチマーク調査の結果を分析した結果、CSPIスコアとネット収益リテンション(以下「NRR」)率との間に高い相関があることが確認されました。参加企業のうちNRRの高いトップ25%の企業はCSPIスコアも非常に高い値を記録しています。

 

以下のグラフは、NRRとCSPIスコアの平均について、トップ25%および75%パーセンタイルの値を示したものです。この結果は、アレックス・クレイトン氏による最近上場した企業に関する分析結果と合致します。彼の分析によれば上場企業のNRR中央値は117%でした。

 

 

結果を詳しく見ると、NRRが高い企業は特に以下4軸が他社より秀でていることが分かりました:

・アライメント

・リソース

・オンボーディング

・アウトカム

 

以下のグラフで、NRRとこれら4軸におけるハイスコアとの統計的な相関が明確に見て取れます。

 

 

 

NRRが非常に高いリーダー企業が実践しているベストプラクティスの一部を以下にご紹介します:

 

1. 営業、開発、マーケティング部門の人びとは、彼らの報酬制度がカスタマーサクセスの影響を受けるため、意思決定もカスタマーサクセスを意識して行います。

 

2. 社外のパートナー会社の人たちは、社内のカスタマーサクセスチームメンバーと全く同じカスタマージャーニーに基づき統制のとれた行動をします:同じプレイブック(手続き書)を使い、同じカスタマー接点の質の良し悪しを評価し、社内チームと同じやり方でコミュニケーションします。

 

3. プロダクトの導入とオンボーディングを担当する社外パートナーの人たちは、社内のカスタマーサクセスチームと全く同じベストプラクティスや資料を用いて仕事をします。

 

4. カスタマーが実現したアウトカム(成果)を測定し、セグメント別に設定した基準値に基づき比較分析することで、非常に成功しているカスタマーや苦戦しているカスタマーをピンポイントで見つけ出して予測的な対応をとります。

 

国ごとの違い

カスタマーサクセス パフォーマンス指標™ ベンチマーク調査2018には、米国、英国、ニュージーランド、そして日本の企業が参加しました。国ごとに結果を比較すると、日本だけ大きな違いが見られました。本調査に参加した日本企業のNRR平均は、他国からの参加企業のNRR平均よりも8%低い結果になりました。またCSPIスコアの平均も51ポイント低い結果になりました。

 

しかしながら、これらの数値は平均値に過ぎません。重要なのは、調査に参加した日本企業の中にも、NRRとCSPIスコアのハイパフォーマーが複数存在したという事実です。

 

サクセスラボの弘子ラザヴィや日本で活躍するビジネスリーダーたちと議論したところ、日本ではカスタマーサクセスがまだ十分に浸透していないことが分かりました。この点はCSPIスコアに裏付けられています。

 

一方、8軸ごとに結果を見ると、日本企業は他国の参加企業に比べチーム軸とリソース軸で高いCSPIスコアを記録しました。

 

 

日本企業のチーム軸スコアが高い傾向なのは、より幅広い業務をバランスよくこなせるゼネラリスト志向が強いという日本企業の価値観がその背景にあると考えられます。幅広い業務領域をカバーしてくれるカスタマーサクセスマネジャーがいることで、カスタマー企業内の利害関係者は彼・彼女らとの関係性が堅固になり、結果としてカスタマーとの接点が1人に絞られる傾向が一般的にあります。加えて、特定領域における専門性の高い人材が育たない傾向もあります。

 

日本企業はリソース軸でもスコアが高い傾向がありました。日本企業は、カスタマーが成功するために役に立つ情報や手段を提供することに対し他国よりもずっと力を入れているようです。専任の担当者を付けて、カスタマーコミュニティやプロダクトの利用ガイド、ウェビナーなどでカスタマーに情報を提供する仕組みや資料の構築に取り組むことが一般的なようです。

 

今後、日本企業が他国企業とのギャップをどのくらい埋めてくるのか、2019年の調査結果が楽しみです。

 

ネクストステップ

最後に、現在は下位25%にいる企業がトップ25%にいる企業の実務レベルまで進化するための道筋をご紹介します。

 

ポイントを一言でいえば、自社におけるカスタマーサクセスの位置付けを上げることです。カスタマーサクセスは、会社にとって最大の収益源であるカスタマー基盤を責任もって維持、拡大することそのものです。具体的には以下を実行する必要があります:

 

・自社プロダクトがフィットする適切な見込み客にだけ営業しましょう。フィットしない相手を追いかけるのはカスタマーサクセスのリソースの無駄づかいです。新規顧客の獲得コストをカバーするのに今や平均30か月かかります。プロダクトフィットのないカスタマーは収益を食いつぶす存在です。

 

・プロダクトやサービス、関連資料の使い勝手を磨きあげ、カスタマーの余計な負担を最小化することで、カスタマーがずっと成功し続けられるようにしましょう。

 

・カスタマージャーニーを標準化して文書化し、社内の全部門と社外の販売パートナー・SIパートナーの人たち全員がおしなべて活用するよう徹底しましょう。

 

・オンボーディングや導入のプロセスには専任者の担当をきめたり専用サービスを活用したりして、アダプションの改善に努めましょう。

 

・カスタマーに提供する価値やリスクを測定し予測できるよう、”良い状態”, “普通の状態”, “良くない状態” を定義しましょう。それぞれの状態に対する対応法を定めた「プレイブック」を用意してだれもが必要な対応をもれなく行動に移せるようにしましょう。

 

・カスタマーに価値を伝えましょう。目指したい未来を描いてカスタマーと共有し、カスタマー企業内の意思決定者がその未来に自信をもって投資できるよう後押ししましょう。

 

興味深いことに、トップ25%へ至る道筋はどの会社でも同じです。改善余地のある軸はほぼ一致しており、高いスコアを記録する軸はアライメント軸とリレーション軸であることが共通しています。

 

上述の測定指標や分析結果を参考にすることで、スコアが改善したり収益面で良い影響が見られ、何よりカスタマーの喜びとカスタマーからの収益との最適なバランスが見つかるはずです。

 

(以上)

 

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