
こんにちは!Customer Success Japan(当サイト)で記事執筆を担当することになりました?中森菜美子と申します。
初めての記事となる今回は、カスタマーエデュケーションについて取り上げます。
カスタマーエデュケーションは、カスタマーサクセスをスケールさせるのに有効な、とても重要なトピックですよね。カスタマーサクセス組織で取り組んでいる企業も多いのではないでしょうか。みなさんの会社では、どのような内容をカスタマーが学べるようにしていますか?
私の経験に基づくと、カスタマーのサクセスを実現するために学んでもらう必要がある内容は、以下の3種類に分類できると思います。
1. プロダクトやサービスの利用方法
2. 成功に必要なマインドセット
3. チーム編成の要件
1.の利用方法については必要不可欠ですが、それだけではサクセスにたどり着くことはできません。カスタマーにとってのサクセスとは何か?の定義が明確になっていて、そのサクセスに向けて能動的に動けるキーパーソンがいなければ、ツールを使いこなしてもらうことができないからです。
2.のマインドセットとは、このようなゴールが設定されていることや、ゴールを達成することの意義が決裁者や推進担当者の中で腹落ちしていることなど、関係者の姿勢を指しています。
カスタマーサクセスを担当し始めた当初、私は「プロダクトやサービスを導入する決定をカスタマーがしたのだから、ゴールが明確になっていることや、熱意ある担当者がアサインされているのが当たり前だろう」と考えていました。
しかし、幅広いお客様と関わる中で、それが幻想であることに気付きました…。決裁者もサービス導入の動機がふんわりしていたり、決裁者が良いマインドセットを持っていても、キックオフに出てきた担当者には全く伝わっていなかったり、ということは珍しくありません。そのような場合、オンボーディングの中でマインドセットの調整もすることになり、非常に苦労した経験があります。
このような気付きを通して、カスタマーへのエデュケーションは、受注前の営業段階から実施すべきだ!と強く思うようになりました。「2.? 成功に必要なマインドセット」や「3. チーム編成の要件」は、カスタマーサクセスのメンバーが受注後初めてカスタマーに接するキックオフの時点で既に決まってしまっていることが多いためです。
キックオフでは、実際にプロダクトやサービスを運用する担当者の方に参加してもらいたいですよね。そうなると、キックオフの前段階から「どのようなメンバーをアサインすべきか」について、さらには「なぜ優秀なメンバーをアサインしてまでこのプロダクトやサービスを使った取り組みをするべきなのか」についてのエデュケーションが必要になるわけです。
受注前の営業段階であれば、プロジェクトのオーナーとなる決裁者にアプローチができるため、サービス導入に向けてのマインドセットを刷り込み、適切なチーム組成を実現することが可能です。こうなると、カスタマーサクセス部門だけではなく、営業部門での取り組みが必要不可欠です。
問題は、営業部門のメンバーにそれをどうやって動機付けするか?という点でしょう。営業プロセスの中でエデュケーションを必須とすると、当然工数が余計にかかり、売上目標の未達リスクが生じます。そのため、営業にエデュケーションを実施してもらうには、動機付けの方法もセットで考える必要があります。例えば、営業部門の目標をMRR(だけ)ではなくライフタイムバリューで設定する、営業とカスタマーサクセスの部門を合併して両方をマネジメントする部門長を付ける、などの手段が考えられます。
カスタマーサクセスと営業とのコラボレーションについては検討しがいのあるテーマです。先の記事「カスタマーサクセスと営業がコラボレーションし始める時(とき)」もぜひ併せてご覧ください。
当サイトで人気No2の記事「カスタマーサクセスに全力を尽くすSaaS創業者の必読バイブル」でお馴染み、HubSpotのマイケルさんが書かれた、カスタマーエデュケーションに関する記事を以下にご紹介します。みなさんの会社でカスタマーエデュケーションを始めたり見直したりする際は、以下6つの視点からそのメリットを議論してみてはどうでしょうか?
注:著者Michael Redbord氏の許可を頂き原文の和訳を紹介します
カスタマーエデュケーションプログラムを構築すべき6つの理由
カスタマーが抱く期待はかつてないほど高まっています。
その期待に応えるカスタマーサクセス、カスタマーへのサービス、エデュケーション、サポートに関しては、近年、数多くの選択肢が出てきています。しかし、数あるオプションの中からカスタマーに提供するものを選ぶ際に、「なぜ」それを提供するのかという根拠の部分は意外と見過ごされがちです。
私は、HubSpotという会社で長年カスタマーサクセスを推進しています。その経験から学んだことを1つだけ挙げるとすると、「なぜ」そのオプションを提供するのかという根拠を理解することが、カスタマーサクセスリーダーにとって実は最も重要なステップだということです。「なぜ」を理解することなく新しいプログラムの採用を決めることはありえません。
カスタマーエデュケーションは、カスタマーに向き合うチームにとってもカスタマーにとっても素晴らしい資産です。一方、無数にある他のカスタマーサポートの選択肢の中に埋もれてしまうこともあります。その運命を分ける「なぜ」の部分に関し、私の経験に基づき大切だと思う6つの根拠を以下にご紹介します。
もしあなたが今、カスタマーエデュケーションプログラムの提供を検討中ならば、以下6つの「なぜ」をぜひ参照ください。その中に、長期的により優れたカスタマー育成に役に立つあなたの状況に最適な「なぜ」があることを願っています。
カスタマーエデュケーションプログラムを構築すべき6つの理由
1. チームと共に発展する
カスタマーエデュケーションは、カスタマーにとって最も適した形で提供すべきです。このため、カスタマーのことをより深く知りながらエデュケーションの形を進化させていくのがよいでしょう。例えば、最初は見込み客やカスタマーに向けたプロダクトやサービスに関するFAQページという形で始まるかもしれません。
カスタマーサービスのチームが大きくなり、チームメンバーがより数多くのカスタマーからの問い合わせに対応するようになると、同じトラブルシューティングに関する質問が繰り返し発生することに気付くでしょう。そうなったら、カスタマーサポート関連のナレッジベース構築に取り掛かるタイミングです。ナレッジベースはカスタマーとの対話の助けになるだけでなく、カスタマーが答えを自分自身で得るために直接参照るのにも活用できます。その方がサポートチームへ問い合わせるよりも早く問題を解決できるでしょう。
プロダクトやサービスの使い方を紹介する際には、動画という形式が適していることもあります。動画なら、ユーチューブやソーシャルメディアを活用して、コミュニティの中でシェアすることも可能です。
プロダクトやサービスが急速に市場に普及した後は、プロダクトの使い方に関する詳しいトレーニングを提供する講義やアカデミーを作るとよいでしょう。弊社でも、Hubspotというサービスで「ハブスポットアカデミー」を立上げ運営しています。
カスタマー基盤がどれだけ大きくても、ニーズの内容がどれだけ多様でも、上記のようなカスタマーエデュケーションの取り組みを1つないし複数組み合わせることで、あらゆるニーズをカバーできます。
2. カスタマーサポートの仕事を減らす
カスタマーサポートのチームは、カスタマーから寄せられる質問や問題に対応するために存在しています。カスタマーエデュケーションプログラムがあれば、カスタマーから単純な質問が寄せられることが減り、チームはより重要なバグやトラブルシューティングなどの問題に時間を割けるようになります。
小さな問題はカスタマー自分自身が簡単に解決できるような仕組みを構築することで、カスタマーサポートのチームはバグなどのより大きくて重要な問題に対応できるようになります。つまり、カスタマーへプロダクトやサービスの価値を届けるために、よりプロアクティブに動けるようになるのです。
問い合わせに受け身で対応するカスタマーサポートからプロアクティブなカスタマーサクセスに進化を遂げることによって、カスタマーの長期的なロイヤリティを獲得できるようになり、カスタマーに向き合うチームの実力が向上するでしょう。
3. 営業活動をサポートする
営業担当者は、見込み客から受注を勝ち取るため、いかなるリソースを駆使してでも、競合他社と自社とを少しでも差別化しようとします。
カスタマーエデュケーションプログラムは、営業が差別化をアピールする上で大きなアドバンテージになります。営業担当者は、見込み客がカスタマーになればエデュケーションプログラムというサービスを受けられるという点を大いに売り込むことができるからです。
また、カスタマーエデュケーションプログラムは、営業担当者自身がプロダクトのエキスパートになって、見込み客とコミュニケーション中に発生する質問に対しより的確に答えるのにも役立ちます。ヘルプ関連の資料や使い方を紹介する動画は、カスタマー体験を向上させるだけでなく、営業担当者をサポートすることになるのです。
4. ブランドキーワードでの検索結果で自社のウェブサイトが表示されやすくなる
プロダクトやサービスの使い方についての資料を作成・公開していくと、ブランドキーワードでの検索結果にそれらが表示されるようになります。見込み客やカスタマーの中には、サービスに関する特定のキーワードで検索する人が増えています。
例えばHubspotに関しては、「ハブスポット CRM 無料 利用」や「ハブスポットでブログを書く方法」などのキーワードが実際に検索されていて、HubSpot社が公開しているナレッジベースから回答を入手することが可能です。
このようなキーワードで検索している人には、きれいにまとまったブログ記事は役に立ちません。むしろ、使い方を詳しく説明しているヘルプ資料の方が、彼らの意図に合致した、必要としている答えを早く提供できるでしょう。
5. 費用対効果が高い
カスタマーエデュケーションプログラムは、カスタマーからの質問に対し、1対1ではなく、1対多数で答えることができる、とても費用対効果の高い方法です。
あなたのチームの人材は、並外れたカスタマー体験を提供することによって競合優位性を生み出す大切な要素でしょう。しかし、カスタマーエデュケーションもまた、カスタマーをサポートしてあなたのブランドに対してよりロイヤリティを獲得するための差別要素になります。
カスタマーサポート担当者やカスタマーサクセスマネジャーは、カスタマーとの1対1の対話を通してカスタマーとの関係性を良好に保ち、深めています。そしてカスタマーエデュケーションプログラムは、カスタマーが簡単な質問に対してすぐに答えを得られる状態にすることや、プロダクトやサービスから最大限の価値を引き出すのにとても役立ちます。
6. カスタマーが自己解決する助けになる
私たちは、自分の仕事は全て無くてはならないものだと考えがちです。実際に必要不可欠な仕事も多いでしょう。しかし、大抵の人たちは、電話やメールをするよりも検索エンジンを使って質問の回答を得る方が効率的だと感じています。
カスタマーは自分自身で問題を解決できることを望んでいます。カスタマーの時間はあなたの時間と同じくらい貴重なものです。そして、カスタマーサポートチームが提供するサービスの総量を増やすための手段は、担当者をもう一人雇うことよりも、テクノロジーを使うことの方が適しています。テクノロジーを活用すれば、カスタマーが様々なチャネルや方法でサポートを得ることができるようになり、カスタマーサポートチームの工数も減らせます。
以上、カスタマーエデュケーションを導入すべき6つの理由を紹介しました。
カスタマーエデュケーションは、カスタマーを惹き付け、ずっと使い続けたいと思われるような先進的かつ革新的な会社が実際に活用している手段です。カスタマーをしっかりサポートしつつ、カスタマーに向き合うチームの時間や業務フローが拘束されません。また、検索経由でウェブサイトの訪問者を惹き付けたり、営業段階での競合優位性としてアピールできたり、カスタマーサポートチームの業務を助けたり、カスタマー自身が自己解決をする助けたりと、想像以上に多くのメリットがある方法です。