
私が尊敬する女性プロフェッショナルで、米国カスタマーサクセス番付「ストラテジストTop 100名 」の1人、クリステン・ヘイヤーさんの記事をご紹介します。
彼女は多くのITカンパニーで営業、マーケティング、そしてカスタマーサクセスの要職を歴任後、2015年に独立し、カスタマーサクセス推進を支援する The Success League社を設立しました。
カスタマーサクセスの主要イベントには必ず登壇している彼女の姿があります。
今年サンフランシスコで開催された Totango社の年次イベントで私は彼女のワークショップセッションに参加しました。冒頭、彼女が参加者に「どちらからいらっしゃいました?」と聞いて回り、東海岸やカナダな人が割と遠い方な中、私が「東京です」と伝えたら、すかさず拍手してくれたのを今でも覚えています
女性としては背が高く、西海岸だと珍しい東海岸的な端正なお召し物をいつも美しくキメているので、歩いているだけで「あー、クリステンさんだ!」と気付くほど素敵な女性です。
そんな彼女が、数多くの経営者をサポートした経験に基づき「成果(アウトカム)を出す方法」を指南してくれていますのでご紹介します!
注:The Success League社の許可を頂き原文の和訳を紹介します。
カスタマーサクセスの成果(アウトカム)を出す実践アプローチ
カスタマーサクセスの議論をしている時に最も耳にする言葉は「成果(アウトカム)」です。「カスタマーの成果に注目せよ」や「成果ベースのアカウント管理」などの表現をよく耳にします。
問題は「成果」という言葉がいろいろ違う意味で用いられることです。要は定義があいまいなのです。
カスタマーにとって何が成果なのかハッキリしている時でさえ、カスタマー自身が何を欲しているのか、どうしたらそれを手に入れられるのかを正しく理解するのは難しいです。
この記事ではカスタマーの「成果」を以下の通り定義します:
成果 = カスタマーの事業へもたらされた結果
大切なポイントは、あなたのプロダクトがもたらした結果でも、あなたのソリューション関連の活動による結果でもない、という点です。リアルに実現した事業への「結果」です。
「成果」について話すのは躊躇されがちです。なぜなら、それはあなたのプロダクトの先にあったり、完全にはコントロールできない対象だからです。しかし「成果」こそが、カスタマーにとり最も重要な関心事なのです。
従って、カスタマーが「成果」を手にする手助けができれば、彼らは確実にあなたとの契約を更新し、更に買い増しし、そして周囲へ推薦してくれるでしょう。
カスタマーが最も重視する「成果」を理解し、実現を手助けする実践的なアプローチを以下にご紹介します。
カスタマー1社1社を理解する
出発点として、カスタマーは1社1社みんな違う、ということに留意しましょう。
マーケティングの言葉を鵜呑みにし「カスタマーは課題X(またはYまたはZ)を解決するためにこのプロダクトを買うのだ」と思いたい気持ちはわかります。しかし現実は違います。カスタマーは各社固有の彼らの事業そのものを成長させることが最大の目的なのです。
従って、まずはその期待値を明らかにし、そして成果が実現するのを手助けすることが、カスタマーサクセスの仕事なのです。具体的には:
・事前準備をする
カスタマーのウェブサイトやプレスリリースを見て、彼らが関心を寄せる事業や分野について下調べをしっかりしましょう。カスタマーと会話を始めるのに役立ちます
・質問をする
主要な事業目標と、ソリューションから望む結果についてカスタマーへ直接質問しましょう。あなたのプロダクトへの期待値だけでなく、事業インパクトへの期待値を確実に理解してください
・期待値について定期的に話し合う
カスタマーの計画、優先順位、プロジェクト活動などは頻繁に変更されます。彼らと知り合った当初に集めた情報はすぐさま陳腐化します。従って、カスタマーと定期的に議論を繰り返すことがマストです。
カスタマーと一緒に計画をつくる
カスタマーの期待値と重視する価値を理解できたら次のステップ、即ち、成果を達成するための計画を作成する番です。
この時に留意すべき重要な点が2つあります
1)計画策定は、カスタマーと一緒に作業するプロジェクトでなければなりません。あなたが一方的にカスタマーへ必須目標として指し示すものであってはいけません
2)彼らが測定したい指標はあなたが測定したい指標よりずっと重要です。彼らが測定したい指標を手に入れるため、時にはカスタマーとあなたが協業する必要があります
具体的には:
・目標を設定する
達成したい成果/結果に到達するまでの目標をカスタマーと協力して設定しましょう。”SMART”目標のフレームワーク(Specific, Measurable, Achievable, Relevant, and Time-Bound)を活用すると便利です
・アカウント計画を作成する
“SMART”目標を設定したら、それらを月別または四半期別の目標にブレイクダウンしてアカウント計画を作成します。
・結果を測定する
カスタマーと合意したアカウント計画が完成したら、次は実際の成果データを共有してもらうよう依頼しましょう。あなたのプロダクトから直接入手できないデータが必要なら、それにアクセスする方法を話し合って決めてください。
実績を測定・評価する
アカウント計画が完成したら、結果のトラッキングを開始しましょう。
この時また不安がよぎります。カスタマー社内で別プロジェクト立ち上がり成果を帳消しにしてしまったらどうしよう? もし目標を達成できなかったら? 成果がでなかったらカスタマーは怒り出すだろうか? 1つ1つのヒットやミスについて彼らに何て話せばよいだろう?
大切なことを忘れないでください。あなたがこういった会話を積極的にする・しないに関わらず、カスタマーはこういう事柄すべてを必ず熟慮しています。あなたが「どんな会話も恐れない人」であることを示せれば、必ず、成果をよりコントロールできる立場に立てます。
具体的には:
・常に誠実であり続ける
望まない結果が出た時、それを隠したり黙っていたりしてはいけません。なぜなら、特に経営幹部との議論では彼らは時に否定的な結果すら予測し知りたがります。そして何より、物事を隠そうとすると、あなたのカスタマーは必ずそれに気付きます。
・脱線しない
望まない結果が出た時は、その理由と解決策を意識して議論しましょう。そうすることで会話が枝葉末節に入ったり、苦情受付大会になるのを回避できます。そしてカスタマーにも提案を求めましょう
・よい結果がでたら祝福する
特に望まない結果が出続けている時ほど小さな成果は見落とされがちです。小さくても成果がでたら祝いましょう。その時、あなたがしたことに光をあててはいけません。カスタマーが手に入れた成果とその成功を強調し賞賛してください
繰り返しますが、カスタマーの「成果」は彼らの事業インパクトとしての結果です。
カスタマーの事業そのものへ注意を払うことで、何がカスタマーにとって重要事項なのかを正しく理解でき、期待値を満たす手助けができます。そうなればカスタマーは、あなたのプロダクトを選んで正解だったと確信するようになるのです。