
え、キアさんが「チャーン防止」?!
と、最初にタイトルを見た時、とっても驚きました。なぜなら、キアさんの記事はCustomer Success Japanで何度も登場させてもらっていますが、中でも「 カスタマーサクセスの目的って何でしたっけ?: 日本に生まれている混乱と真の目的」などでは、「チャーン防止どころかアダプション促進すらカスタマーサクセスの最終ゴールではない!」と言い切っている方だからです。
でも、読んでみたら納得です!
最後に、キアさんがいつも強調されている「カスタマーサクセス2.0」レベルの話がちゃんと書かれていました。同じ主張の繰り返しのように見えて、実は視点を「チャーン防止」文脈にし最初に2つ方法を紹介して対比させることで、よりその価値が分かりやすくなっています。
チャーン防止、大切ですね。
注:著者Kia Puhm氏の許可を頂き原文の和訳を紹介します
チャーンを防止する方法
先週は、チャーン防止の基本ルールについて幅広い内容の記事を書きました。今週はチャーン防止に効く方法を3つほどご紹介します。
人材投入アプローチ
このアプローチをとる企業では、チャーン防止を目的に組織が編成され、必要な役割と業務が定義され、そのための人材が雇われ、一人ひとり担当する仕事が決められます。
大まかに定義された企業目標と個人目標のもと、一人ひとりが目標達成に向け勤勉に働きます(場合によりそうでない時もあります)。
カスタマーを重視し常に中心に据え行動する企業文化が浸透した企業では、全社員が、自社プロダクトのフル活用につながるカスタマーの要求すべてを満たすよう懸命に働きます。
このシナリオをとる企業は、カスタマーとの直接的な接触を最優先するため、優れた個別対応力とキメ細かな柔軟性を発揮します。
ベンダー側で組織が上手く編成され、カスタマーとベタベタな関係になることから得られる洞察を自社プロダクトや業務改善へ上手く反映でき、臨機応変かつ機敏に変化に対応できている限り、このアプローチは、カスタマーのニーズからさまざまな学びを得て順次適応する効果的な方法です。
スタートアップに適しているこのアプローチを、私は個人的に好ましく思っていて、常に新規の取り組み/パイロットを観察しています。
一方、このアプローチの課題はスケールしない点です。
このアプローチをとるベンダーはカスタマーの要望に瞬時に対応するため、そういった対応が続くにつれカスタマーは受け身になりがちです。また、カスタマー側の期待水準も徐々に上がり、プロダクト活用に繋がる限りはより高いレベルのサービス援助をカスタマーが期待するようになります。
ベストプラクティス行動アプローチ
「人材投入アプローチ」同様、「ベストプラクティス行動アプローチ」をとる企業でも、カスタマーサクセスの組織構造、企業目標、役割およびアカウント担当が適時定義されています。
このシナリオをとる企業は、カスタマーのリテンション率とエクスパンションの数字を上げることが成長する上で非常に重要だと身に染みているため、カスタマーサクセスは必須だと心から信じています。
そして、より規律のとれたアプローチを好み、更新サイクルを全員が協調して管理できるよう、カスタマーサクセスのベストプラクティスに基づく手順書をしっかり作ります。
またアカウントデータ管理システムをつかい、各カスタマーがいま契約期間のどの段階にいるのか、彼らのプロダクトの利用量はいまどれくらいか、なども常に追跡・管理しています。
このアプローチをとる企業では、カスタマーサクセスが再現性ある公式な方法論として確立されており、契約直後のオンボーディング期間だけでなく、カスタマーライフサイクル全期間を通してカスタマーのヘルス状態を観察しつづけています。その点を私は個人的に好ましく思っています。
一方、このアプローチが問題を抱えてしまう場合もあります。それは、カスタマーサクセスの「ベストプラクティス」が盲目的にコピーされ、活動ベースまたは時間ベースの方法論として実行される場合です。
たとえば、カスタマーが事業レビューを望んでいるか、そもそもそれを価値あるものと思っているかどうか考えず、手順書にあるという理由で実行します。またインターネットからダウンロードしたカスタマーサクセス計画のテンプレートを、それが各カスタマーに適するかどうか吟味せずに使います。その場合のカスタマーサクセスは、決まりなのでカスタマーに「対しする」ものであり、カスタマーの「ためにする」ものではありません。
カスタマーセントリックアプローチ
カスタマーのリテンション&エクスパンションに最も効果的なアプローチである「カスタマーセントリックアプローチ」を、私はチャーン防止の方法としても最も効果的なものだと思っています。
このカスタマー第一主義のアプローチでは、まずカスタマーのことをしっかり理解することから始めます。
彼らがプロダクトを購入する目的は? プロダクトを使って実現したい事業上の成果は何? プロダクトが事業に完全にはまり、それ無しでは事業展開できないという状況になり、本当に入れてよかった、投資効率が非常に良かったと思ってもらえるまでには、通常、現場はどのような変化を経験しなければならないか?
このシナリオをとる企業は、そういった事柄を十分に考慮したカスタマー目線のカスタマージャーニーを描きます。
これから直面する荒波をカスタマーがうまく乗り越えるには何が必要なのかをしっかり理解した上で、自社の事業モデルをカスタマーに合わせて作り始めます。
つまり、カスタマー目線のジャーニーに基づいて、彼らを支援する手順書とそれに必要なスキルセット、役割を決め、ジャーニーの全行程でカスタマーの進捗状況を測定できるような指標を設計します。
さらに、アダプション上のニーズと成熟度の違いに基づいてカスタマーをセグメント分類し、それぞれへのエンゲージメントモデル(ハイタッチなど)を決め、実際にカスタマーを支援するのに最適な組織を編成します。
このアプローチが最も優れていると私が信じる理由は、こうしたアプローチをとる企業は、カスタマーの進化するニーズを常に理解し、調整し、観察しているため 、目先に捕らわれない長期視野に基づいたカスタマーサクセスを組織全体で実行できるからです。
カスタマーのニーズに応じ、テックタッチ、ハイタッチなどのモデルをブレンドし、かつセグメントに応じその度合いを様々なレベルに調整する処方的アプローチこそが、カスタマーを成功に導くための最善の方法です。
この方法は、カスタマーにとり最も自然で、効率的で、効果も大きく、混乱しない方法です。同時にベンダーにとっても、カスタマーのリテンション&エクスパンションを最も積極的に推進できる方法なのです。